徐々にロイヤルブルーに染まっていく空。あの日、彼女が持っていた鮮やかな青の薔薇とは程遠いけれど。ここ最近、青を見ると彼女のことを思い出してしまっている。これが俗にいう、恋の病というやつなのだろうか。
 僕は夕陽を背にペダルを漕ぎ、集合住宅が立ち並ぶ団地の入り口付近で一旦停止する。
 前方からは一台のワンボックスカー。
 近所に住む小森さんの車だ。旦那さんは今、京都に単身赴任中で、奥さんが中学生と小学生の女の子と住んでいる。いつもこの時間になると、奥さんが娘二人を連れて出かけて行く。おそらく塾だろう。
 小森さん宅から2、3軒東に行ったところが僕の家だ。1階がガレージの2階玄関、3階建ての造りになっている。
 僕はガレージに自転車を入れ、玄関のスロープを(のぼ)る。