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 家路についた僕は、自宅のある美山駅の改札を通り、駅のロータリー付近にある自転車置き場へと向かう。
 自宅までは、駅から自転車で5分ほど。割と近いが、何せ僕は軟弱だ。少しでも日中は体力を温存しておきたいため、通学の時だけは駅まで自転車(ママチャリ)を利用している。実は昨年の春に車の免許を取って乗ることはできるのだが、学校が車通学禁止なこともあり、普段は乗る機会があまりない。自宅には両親の車が一台ずつ置いてある。が、最近母が運転を面倒がって全く乗らないため、近々譲り受ける予定だ。小型の淡いパステルグリーンの可愛らしい軽自動車だが、ないよりはマシだ。

 自転車のチェーンロックを外し、ボストンバッグを籠に乗せる。スタンドを軽く押し蹴り、後輪が地面に着いたら“オバサン乗り”。
 オバサン乗りと言われてピンとくる人と来ない人がいる。わかりやすく言うと、まず自転車の左側に立ち「ケン・ケン・パ」をするように左足をペダルに乗せたら地面に着いた右足をバネにサドルに(またが)り、その勢いで走行する乗り方だ。言葉で説明となるとなかなか難しいが、実際に見てみると、「あ、なるほど」「ああ、それか」と納得するはずだ。これは地方によって呼び名が違ったりするのだろうか。僕の場合はオバサン乗りが定着しているので、ついそのフレーズを使ってしまうのだが。もう少しスタイリッシュでかっこいいネーミングにはならなかったのだろうかと今更ながら思う。もし他の呼び名があれば是非教えてもらいたい。