「そうだ、彼女……」
 といっても、何の手がかりもない。山本君の性懲りもない誘いから逃げ出す口実に使うのは気が引けたが。
 思い出せ。あの日、僕が彼女に出逢った時……。
 微かに花の良い香りがした。
 確か、薔薇の花だっただろうか……
  

 思い出せ。全力で。
 
 あの日僕が見た薔薇は……鮮やかな深みのある青色の――

 そうだ。

「もしかしたら、あの花屋に行けば――」
 会えるかもしれない。
 少しでも可能性があるのなら。
 会いたい。
 会いたい。
 もう一度、君に出逢いたい!