苦い思い出の中に、宝石のような時間も存在したことを同時に思い出した。
 あれから1年近く経つが、武蔵君とは未だにプライベートでも仲良くしている。彼は当時浪人生で、今年の春無事に希望の大学へ進学した弁護士の卵だ。あの一件から、彼は驚くほど正義感に満ち溢れ、元々持っていた生真面目さも相まって、直向きで一途な人柄が滲み出るほど精悍な青年へと変貌を遂げた。
また、分厚いメガネを外すと――実はとても端正な顔立ちだったことが判明。思わず僕も見惚れてしまうほどだったのだが、髪型とファッションには専ら疎かったようで、僕は彼の許可を得て実践がてら彼の大学デビューに貢献させてもらった。
 武蔵君のことを考えていると、タイミングを図ったように彼から僕のケータイにメッセージが届いた。