「なァ、神城(かみしろ)ォ」
 間延びした癖のある声が、僕の背後から聞こえた。
「え?」
 振り向くと、同じクラスの山本健太君。典型的なチャラ()な彼は、話のテンポが合わなくて、実はちょっと苦手だ。
(うわ、できればあまり関わりたくないんだけど……何の用だろう?)
「今日さァ。今から合コンやるんだけどォ、一緒行かねェ?」
 やっぱり合コン、か。僕は合コンが好きではない。だから迷わずNOだ。
「ごめん、今日はこのあと予定があるから」
 スッカスカだけどね。
「マジかぁ~。彼女ォ?」
「うん、まあそんなとこかな?」
嘘も方便だ。というか、彼の誘いを断れるなら嘘でも何でもいい。
身も蓋もない言い方をすると、彼に付き合うということは、わざわざ時間とお金の無駄遣いをしにいくようなもの。と言わざるを得ないエピソードが絶えないからだ。