「そうなんだ」
「そうなのよ」
「……贅沢な悩みだね」
 溜息(ためいき)まじりに梨歩は言う。
「それを贅沢だと思うのは自由だけどさ、当の本人は結構真剣に悩んでいたりするのよ」
「へえ~」
 この手の悩みは、どんなに悩みと言い張っても悩みと思ってもらえず、寧ろ嫌みととらえられる。そして、それ自体が悩みとなるのだ。
「たとえて言うなら、痩せている人が『もっと痩せたい』って言ってるのと同じような感覚よ」
 多分、だけど。
「うーん、わかったような……わかんないような……」
 言ってしまえば、どっちもどっち。ティーンエイジャーと呼ばれる世代は、みんな何かしら悩んでいるものだ。
「きっとELLIEは、そんな悩みとは無縁なんだろうな。”パーピー人形”みたいな完璧ボディだもん」
 私たちの親世代の頃に大流行した人形にたとえるとは。私は小さい頃、あの人形が怖くて触ることもできなかったのだが……。
「さあ、わかんないわよ。ELLIEにはELLIEなりの悩みってものがあるかもしれないじゃない」
「どんな?」
「さぁ。背が高いから、男子と身長的なバランスがとりにくいとか?」