ブルーヘヴンの彼方に

 わかりやすいけど、自虐まじりのたとえは妙に生々しくて嫌だ。リアクションにも困る。
「だってあたし……中学生くらいから全然成長しないから。万年幼児体型、グスンっ。どうせ寸胴鍋(ずんどうなべ)だもん、ふーんだ」
 梨歩の声のトーンが下がる。
「梨歩、そんなことないって。私なんて、一時期かなり体重増えて制服パッツパツだったことあるじゃない。梨歩が寸胴鍋なら、私はドラム缶だから」
 (くしゃみ)しただけで制服のボタンやスカートのホックが飛んだりした中学時代。さらに、段差はともかく、何もないところでよく転んでは、制服の(こま)かな付属品は高確率で吹っ飛ぶ日々。何回縫い直したことか。これが“転倒虫”の由来だ。黒歴史以外の何物でもない。
「ドラム缶って……。そういや、確かにまるまる・もりもり・コロコロしてたっけ。でも、今は違うじゃん。結局必要なとこだけちゃーんともりもり残ってくれたんでしょ?」
 そんな恨めしそうな視線で見つめられても、返答に困る。