「梨歩……」
 不意打ちとは卑怯なり。私の中の怒りの感情が一気に鎮まる。
「何だかんだで、あたし、癒されてるのよ。若葉に」
 梨歩はこういう反則技を小出しにしてくる。だからこれまで、喧嘩という喧嘩をしたことがない。
 喧嘩するほど仲が良い、という論理は、私たちの中では成立しない。(むし)ろ、仲が悪いから喧嘩になるという説の方が有力になっている。
 この(さき)何年経っても、私と梨歩はずっと友達のままで居続けられるだろうか。そうであってほしいと思うし、この幸せな関係を壊さないように、私は梨歩との時間を大切にしていこうと思う。
 大人になっても、結婚しても、おばあちゃんになってもずっと。
「私も」
 梨歩が(そば)にいて笑ってくれることが、私の支えになっているよ。