イラッ。
「そんな都合のいいポリシーはやめて」
 私は冷めた口調で切り返す。
「あ、(おこ)った?」
 それでもおどけた様子の梨歩。
「怒るわよ! それが真実ならなおさらッ!」
「ひゃー! ごめんなさいごめんなさい!」
 とはいっても、顔は笑っている。
「……」
「まあ、アレね」
「?」
 アレって何だ。 
「アレよ、アレ」
「アレじゃわからないって」
「もう、何でわかんないの?」
「アレを指さすキーワードが見当たらないからよ」
 よくいる、こういうオバサン。「アレ、アレ」の連呼で伝わらずに最後逆ぎゃくギレするっていう。
「つまりね。あたしにとっては、若葉が花みたいなものだから。一番枯れてほしくない存在が、枯れてなくて良かったなって意味」
 え?