「だって、だってあたし高校に行ってないでしょ? あたしみたいに高校行かずに中学卒業しちゃうとさ、新しい学校で新しい友達できたり、その友達と勉強したり遊んだり、そんな当たり前のことすらできないんだもん。若葉は高校で新しい友達できたりするじゃん。その友達との付き合いだってあたしよりもたくさんあると思うの。どんなに仲のいい友達だって、そうやってだんだん疎遠になっていくんだと思うと寂しくてさ。もしあたしが高校行ってたら、今年一緒に卒業できたかもしれないんだよね。こんなにあっという間なら、あたしも高校通えば良かったかなあ」
 中学3年生の頃、進路希望調査の用紙に梨歩は堂々とこう書き記していた。

《第1希望……音楽活動に専念したいので
 第2希望……進学せずに
 第3希望……歌手を目指します》