ところが、ストリートデビューして3カ月が()った頃。



あれは忘れもしない、私の大学入試の3日前の晩。梨歩が病院へ救急搬送されたのだ。一命は取り留めたものの、入院生活を余儀なくされ、大好きな歌が歌えなくなってしまい――。そのストレスから、自暴自棄になって(ふさ)ぎ込む日々を送っていた。
「これならもう……いっそ、死んだ方がマシよ……」
 無気力になっていく梨歩の姿を見ているのが(つら)くて、私は学校から帰るとすぐさま、あらゆるアーティストの音源、梨歩の好きなお菓子や雑誌を病室まで持っていったりした。が、ほとんど変化が見られなかった。

「若葉。あたし、ただ普通に、今までどおり……歌いたいだけなんだよ」