「そういえばさ、若葉は髪染めないの? もう高校卒業したんでしょ?」
 梨歩が私の髪に触れる。
「うん、今のところは」
「それにしても、かなり長いよね。最後に切ったのいつだっけ?」
 腰の辺りまで伸びたこの髪型は、中学時代からほとんど変わっていない。
「前髪と毛先はこまめに切ってるわよ」
「あ、そっか。若葉のお母さんって美容師、というか美容師の学校の先生だもんね」
「それもあるけど、最近は自分で切ってるかな。セルフカットのやり方教わってね。ここまで長いと、自分で毛先確認しながら切れるから」
 もうすぐ大学生になるというのに、毛先をパツッと切りそろえた姫カットからは全然卒業できないでいる。