「へえ、高校の卒アルってこんな感じなんだ。いいなあ、みんな楽しそう。中学より自由な感じがいいね。お菓子学校に持って行っても怒られないんでしょ?」
「梨歩は中学時代毎日お菓子持って行って、しょっちゅう生徒指導室で怒られてたよね」
「だって、給食冷めててあんまりおいしくなかったんだもん。口直しは必須じゃん」
「その発言も指導の対象だったよね?」
「えー? 絶対みんな心の底では思ってたよ。それで『残飯増えて困るから残すな』とかいわれてもさー。だったらもっとおいしいの作ってよってなるじゃん。そう思わない?」
「うーん……。思う思わないは別として、まずは作ってくれたことに感謝でしょう」
「またまたー、いい子ちゃんぶっちゃって」
「はいはい」
 しまった。思いの(ほか)卒業アルバムに食いつく梨歩に、私は手土産を渡すタイミングを完全に逃してしまっていた。本当は真っ先に渡すはずだったのに、このテンパりよう。