「お嬢さん、気をつけてね」
さっきのサラリーマン風の男性が、「開」ボタンを押して見送ってくれた。
「はい。ご親切に、どうもありがとうございました」
扉が閉まる直前、私はその男性のスーツの襟元に目が止まった。
(あれは、確か……?)
そうか、弁護士だ。うん、納得。
そう。確かあのバッジは、ひまわりの花がモチーフなんだよね。ひまわりといえば――
……と、何でもかんでも花に準えて見てしまうのは、最早職業病だろうか。いや、職業というのはちょっとおこがましい気もするけれど。
気を取り直して、進行方向に向き直る。
「確か、この辺りだったかな」
うっかり、本来の目的を忘れるところだった。いろんなことが一気に起こったせいで、私は少々頭の中が混乱していた。
院内のこのフロアには、複雑に入り組んだ長い廊下が広がっている。地元ではかなり大きい病院なので、無理もない。通い慣れたはずの私でさえ、たまに間違えることもある。
「406、406……」
さっきのサラリーマン風の男性が、「開」ボタンを押して見送ってくれた。
「はい。ご親切に、どうもありがとうございました」
扉が閉まる直前、私はその男性のスーツの襟元に目が止まった。
(あれは、確か……?)
そうか、弁護士だ。うん、納得。
そう。確かあのバッジは、ひまわりの花がモチーフなんだよね。ひまわりといえば――
……と、何でもかんでも花に準えて見てしまうのは、最早職業病だろうか。いや、職業というのはちょっとおこがましい気もするけれど。
気を取り直して、進行方向に向き直る。
「確か、この辺りだったかな」
うっかり、本来の目的を忘れるところだった。いろんなことが一気に起こったせいで、私は少々頭の中が混乱していた。
院内のこのフロアには、複雑に入り組んだ長い廊下が広がっている。地元ではかなり大きい病院なので、無理もない。通い慣れたはずの私でさえ、たまに間違えることもある。
「406、406……」