「!!」
 梨歩の表情が引き()った。
「梨歩、この人はロゼさんって言ってね……」
 私はすかさず梨歩にロゼさんを紹介した。
「わ、若葉っ……。何普通に会話してるの?」
 戸惑う梨歩。
「何って、ロゼさんはエディさんのバイト先のカフェのマスターで――」
 梨歩が私の説明を遮る。
「い、いくら何でも怪しすぎでしょう! こんな網タイツに、真っ赤なハイヒール履いたオッサンのどこが……」
「んまっ! オッサンですって!?」
「オッサンじゃなきゃ何だっていうのよ、きンも」
「むっきぃ~! アンタ、超失礼な子ね。アタシはまだ35よ。ロゼ姐様とお呼びっ!」
「はいはい、わかったよ。オッサン」
「ぐぅ……」
 ロゼさんが下唇を噛みしめている。
「ちょっと、梨歩。挑発しないの。失礼でしょう」
「あ、バレた?」
「まったく……」




 照明が再びステージを照らし始めた。
 5つのシルエット。仄暗いステージに降り立った5人の姿が静かにその時を待っていた。

 ドラムのカウントを刻む音が、再開を合図した。同時にスポットライトがステージ中央に立った人物を照らし出す。