ひとしきり泣いたあと、梨歩は「今日はありがとうございました」と律子さんに頭を下げた。私も梨歩に同調する。

「こちらこそ。わざわざ遠方から足を運んでくれてありがとう」
律子さんは玄関先まで見送ってくれた。
「涼平の思いを知ってもらえただけで十分やわ。わたしとしては、あまり過去にとらわれすぎないようにあなたには生きていってもらいたいから。もし、その指輪が重荷だって感じる日が来たら……手放してくれていいでね」
「大丈夫です。先のことはわからないけど、今はまだ涼ちゃんを感じていたいから。もしこれを卒業する時が来たとしても、あたしは絶対に……涼ちゃんのこと、忘れません」



「押さないでくださーい!」
「列の最後尾はこちらでーす!」
「二列ずつ順番に前へお進みくださーい!」
 今日の会場『フラワーフェスタ記念公園』は、世界中の薔薇が寄り集まった公園だ。この公園の特色は、何と言っても人々の夢が詰まった『ブルーローズガーデン』と呼ばれる青い薔薇の品種が数多く揃った場所。
「これ、来場者やばいね。人数制限かかりそう」
「うん。ほら、チケット譲ってくださいって人が何人かいるよ」
「本当だ」
「譲れないけどね。あたしの大事なチケットちゃん」
「まあ、そうね……」
 ゲートでチケットを提示すると、受付スタッフのお姉さんが半券を切り取ってくれる。
「あ、そういえば。関係者は特別に座席が用意されているみたいよ」