「あ、うん。まあ、防音になってるからね。音は外に漏れない作りになっているから」
「!! あ、あの。私、やっぱり――」
 僕はガチャッとドアを開いた。
「キャッ!!」
「そんなに怯えなくても大丈夫だよ、ほら」
 僕は彼女の背中を押すように室内に押し入れた。
「ちょっと、やめ――」

「あ、お疲れー」
「あ、キリト。遅くなってごめん」
 ドア付近には、長髪を後ろで束ねた少年、キリトがいた。

「あ、エディさんのガールフレンドですか?」
 キリトはかなり人懐っこい性格だ。初対面にもかかわらず、ずいぶん親しげに若葉ちゃんに話しかけている。
「若葉ちゃん、紹介するね」
 僕は、彼女をさらに部屋の奥に招き入れた。
「え? ここは……」


 ここは、僕ら専用の秘密の音楽スタジオだ。この店の地下にこんな場所があるとは、彼女はおろか、他の誰にも知られていない。
「初めまして、俺は深海(ふかみ)キリトっていいます。あっちの赤髪の目つきの悪い奴は俺の双子の弟で、ミナトっていいます。あ、それで――」
「そのぐらいにしとこうか」
「あ、アサ(にい)
「まったく、キリトは本当におしゃべり好きだな」
 一際長身の白銀色の短髪の青年・アサトもといアサくん。その手にはヴァイオリンが。
「俺はガーディナー亞紗斗ステファンだ。アサトって呼んでくれればいい」
「こ、こんにちは。私は山口若葉、です」
 続々と登場する人物に戸惑いながらも丁寧な挨拶をする彼女。
「アサ君は現役の音大3回生なんだ」
「え、音大? すごい」
「ちなみに、キリトとミナトとは従兄弟同士だ」
 家系図書くとすごいことになるんだよね、ここの一族は。
「え、どういうこと?」
 僕は彼女に順番に説明する。