何故か二人は含みのある笑みを浮かべてた。
何かを企んでいるような。気のせいだろうか。でも、気になる。
「え、何? どういうこと? 何でエディが……」
「ああ、代わりに出しといてあげようと思って。まだ外出られないでしょ。僕今日は暇だから投函してくるよ。だから住所だけここに書いて」
エディは無地の封筒をあたしに差し出してきた。
「え、でも……そんな、悪いし」
「気を遣うのは梨歩らしくないよ」
「はあ? どういう意味よ」
「そのままだけど」
「キイッ!」
あたしは書き殴るように封筒に自宅の住所を記した。
「はい、じゃあこれでお願いします」
「梨歩」
「何?」
「これ、難読過ぎて読めない」
「え? どこが?」
「全部」
何だと? それはつまり、こういうことか。
「……悪かったわね、字が汚くて」
「あ、わかった?」
エディはすぐあたしをからかいたがる。
あたしの知っている昔のエディは、もういない。
「冗談だよ。ギリ読めるから安心して」
いちいち嫌味なやつだ。絶対わざとだ。
「エディさん、もうそのくらいにして」
若葉がエディを諌めてくれた。
「わかったよ、」

エディが帰った後、あたしは若葉と二人きりになった。
ちょっと気まずかったけど、もう以前の蟠りは氷解したし、積もる話もあるからとあたしから話を切り出した。
「そういえば朝日兄ちゃん、3日前に桃ちゃんと久々に来てくれたんだけどさあ。赤ちゃん授かったんだって。戌の日っていうの? 安産祈願してきたみたいなの。ああ、あたしもいよいよおばちゃんかぁ」
「へえ、ダブルでおめでたい話ね。でも、梨歩が叔母さんになるって不思議な感じがするわ」
「でしょ? あたしも年とるわけだわ」
「いや、まだ10代じゃないの」
「ああ、そっか。いくら成人してるとはいえ、あたしまだ10代じゃん。叔母さんじゃなくて、名前呼びさせよっかな? 梨歩姉ちゃんとか。あたし下にきょうだいいないし」
「私はきょうだい自体いないから甥っ子や姪っ子は難しいけど。あ、パパの再婚相手の子が子ども生まれたら私も叔母さんになるのか」
「え、何? 若葉のお父さん、再婚したの?
しかも子どもって……」
え、何それ。聞いてないし。あたしが死にかけてた間に何が起こったの?
「あ、うん。何かややこしいんだけど、私も最近知ったのよ。パパ、10年前に再婚したらしくて。今の奥さんの連れ子と、パパとその奥さんの間に生まれた子がいるんだって。ママとしてはパパとやり直したかったみたいなんだけど、私の高校卒業と同時に養育費の支払いを終えるタイミングで大事な話があるってパパからその話を切り出されたみたいでね。私、パパのことすごく好きだったけど、このときばかりは私もびっくりして……嫌いになりそうだったわ」
「そうだったんだ。何か、ごめん。あたしばっか浮かれちゃって」
「いいの。もう済んだことだし、今は寧ろスッキリしてるから」
「そっか」