――梨歩、もう時間がないから手短に言うよ。
「え?」

 やっぱり。
 そうだよね。
 こうして会えること自体奇跡みたいなものなんだし。
 たとえこれが、夢だったとしても。

――今を、生きろ。
 まっすぐにあたしを見据えて、涼ちゃんは言った。

――夢は必ず叶う。諦めない限り。
「涼ちゃん……」

――もうそばにいてやれないのは心残りだけど。俺はいつも、梨歩のこと……応援してるから。
「あたしの、夢……」

――歌手になるんだろ?
「……うん」

――なれるよ、梨歩なら。
 涼ちゃんの手が、あたしの髪を撫でるようにするりと抜けて。

「あたし……生きる」

――ああ。

「叶えたい夢があるんだもの。だから、あたしまだ……」
 死ねない。死にたくない。
 でも、涼ちゃんは……。

――俺の分まで、生きて。

 志半ばで命が潰えることほど、無念でならないはずなのに。

――心のままに生き……て。

「涼ちゃん!」

 すうっと光の粒が舞い、涼ちゃんの姿が泡みたいに弾けて見えなくなった。