「涼ちゃん……」

 どうして。
 どうして。

 繊細な色鉛筆で描かれたあたしの頬に、ぱたぱたと音を立てて雫が落ちる。

 ――涼平は、先月……亡くなりました。――


 あまりに突然の悲報。
 あたしは呑気に、「どうしてお見舞いの一言もいってくれないの」なんて文句の電話を入れようと電話したところだった。
 タイミングがいいのか悪いのか、電話に出たのは彼のお姉さんだった。
 面識も何もない彼女は、あたしが誰かと理解していたようだった。
「ごめんなさい」と嗚咽する彼女にあたしは訝しる。
「あの、涼ちゃんは……?」
 そして、あの言葉。


 何て残酷な時間なのだろう。
 あたし、声も出なかった。
 電話越しに聞こえてくるお姉さんの嗚咽まじりの言葉。
 どういうこと?
 帰省中に交通事故に遭って休学するってことも最近知ったばかり。
 そしたら今度は病気が見つかって、既に末期だって?
 
 あたし、一緒にいて全然気づかなかったの?

 あたしの、せい?