”ごめんね”の言葉が、やけに遠く感じる。
 心の底から申し訳ないという思いを届けたい時に限って、すんなり出てこないのはどうしてだろう。
 たった一言なのに。
 どうしてこんなにためらってしまうのだろう。
 ケータイの送信ボタンがなかなか押せない。そんな些細なことも、今は満足に出来そうもない。
 あたし、いつからこんなに憶病になっちゃったの?
「……とりあえず、今日はもう休みなさい。若葉ちゃんたちには、私からもう一度話しておくから」
 お母さんはそう言い残してあたしのいる病室を出た。
「……」
 一人残ったあたし。
 布団から顔を出し、天を仰ぎみる。
 狭い空間。何から何まで真っ白な空間。
 暗闇よりも深い、虚無感。もし”永遠”があるとするなら、こんなに虚しい時間を過ごす今のあたしにとっては、拷問でしかない。それならいっそ、死んでしまった方が遥かに楽だとさえ思う。
「このまま……死んじゃえばよかったんだ……」
 死を覚悟したわけじゃない。死が怖くて仕方なかったはずなのに、今や生きる気力すら危うい状態になっている。
 本当に、これがあたしなの?
「……」
 枕元に置かれた、涼ちゃんからのプレゼント。
 これが最後になるなんて、思ってもみなかった。