〈ピロロロ……〉
 彼女のケータイが鳴った。
「ちょっと、出てもいい?」
「どうぞ」
 助手席に座ったまま、彼女は遠慮がちに通話ボタンを押す。
「もしもし……あ、おばさん。どうしたの?」
 受話器から漏れ出す声は、どこか緊迫した様子だった。
 何だろう。胸騒ぎがする。
 同時に、次第に彼女から笑みが消えていく。

「……わかったわ。ありがとう」
 彼女は俯いたまま。
 かける言葉を探していると、彼女が口を開いた。