校庭にそびえたつ大きな桜の()。創立記念に植えられたらしい。樹幹も逞しく成長し続けた結果、数十年の時を越えた。一体、これまで何人の卒業生を見送ってきたのだろうと思うと感服だ。一番ねぎらうべきなのは、もしかしたら先生よりもこのご神木なのではないかとさえ今更ながら思った。その枝先には、ほんのり赤みがかった桜の蕾が風に揺らいでいる。
 花はすごい。まるで自分が咲く季節を知っているみたいに、決まった時期に花を咲かせる。そうやって、私たちに季節を教えてくれるのだから。
誰もいない校庭に鳴り響くチャイムを背に、「じゃあね」と、私は学び()を背に校庭を後にした。