彼女が気まずそうに言った。
「実は、今入院してて。半年前に持病が悪化して救急搬送されてそのまま……」
「そうだったんだ……ごめん。不躾(ぶしつけ)だったね」
「いえ。まあ、彼女は今のところ元気なので。病気自体は結構重病なんですけど、歌手目指してて」
「へえ、すごいね。いつからやってるの?」
「本格的に始めたのは中学卒業してからだったと思います。高校進学せずに、ドーナツ屋でバイトしながら資金貯めて楽器買ったり、ライブの遠征費用にするんだとか、グッズも作りたいとか。私も協力して一緒に貯めてるんですけどね。そろそろかなと思った矢先に倒れちゃって」
「そっかぁ。いつか叶うといいね。友達の夢」
「そうですね。今はEDENの歌詞一般公募にチャレンジするんだって作詞に張り切っています」
「それは応援したくなるなあ。あ、ていうか。若葉ちゃん、友達の夢のために一緒に貯金してるの?」
「え? まぁ、はい」
「すごいなぁ。人のためにそこまで尽くせるなんて。ますます好きになっちゃうよ」
「もう、やめてくださいって」
「いや、やめない」
 そんなこんなで、あっという間に一時間が経過した。高速道路は使わず、下道のぶらり旅だ。今日は県外にある彼女の好きな植物園に向かう。