「やれやれ……」

 面倒な妹を持つのも辛い。実家出ようかな、と最近本気で考え始めたところだ。卒業したら本当に出よう。うん、そうしよう。
 僕はガレージから車を出し、待ち合わせ場所へと向かう。
「選曲は……と」
 デート時のBGMはムード作りには欠かせないくらい重要だ。彼女が知っているかどうかはわからない。でも、それもまた会話のネタになるだろう。お互いの知らないことを徐々に知っていくプロセスが、恋愛の醍醐味なんだ。
「我ながらいいこと言うなぁ」
 とはいえ、実際に僕は恋愛初心者で経験値は限りなくゼロだ。
 彼女に物足りなさを感じさせてしまったらどうしよう、と不安が(よぎ)ることもあるが、いっそ初心者なら初心者らしくと開き直った方がうまく事が進むだろう。シクりたくはない。でも、シクりをどう切り抜けるかのほうが大事だ。僕はそう信じている。いや、信じたい。