何か、まずいことでも言ってしまったか。
「ああ、あれは……その。あの時、卒業制作のウェディングブーケを作る花材をバイト先まで買いに行ってて」
「ん? ああ、それで花をいっぱい持ってたんだ」
「はい。ちょっと失敗してしまって……、学校でもらった花だけだと足りなくなっちゃって。そしたら、思いの外安く売ってもらえて嬉しくなっちゃって」
「前方も見えなくなっちゃうくらい、浮かれちゃった?」
「……はい」
 俯く彼女。仕草一つ一つが可愛らしい。
「でも、そのおかげで君と出会えた」
「……!」
 ああ。
 嬉しすぎて、僕の中から溢れ出す言葉が止まらない。
「何気ないことだとは思うけど。少なくとも僕はあの瞬間から、君のことが忘れられずにいたんだよ」
「え?」