「はい」
 会計を済ませ、エレベーターで降りていく。ガラス張りの室内から見えるのは、丘のように隆起した芝生の一角。転落防止用のフェンスの手前に、恋愛成就の鐘。鐘が風に揺られた時にその音を聞くことができたら、その恋は成就するとかしないとか。今は誰もいない。チャンスだ。
 僕は足早にその地を目指して行きたい気持ちを抑えつつ、彼女の歩幅に合わせて歩く。これはとある雑誌の情報だ。読んでおいてよかった。

 遠くに映ったオレンジの陽光。時折白く、赤く、雲間から覗いては、徐々に凪いだ水平線に近づくようにゆっくりと落ちていく。