「ホホホ! なかなか肝が据わってるじゃないの。ますます気に入ったわ」
「姐さん、どうするの?」
「明日からいらっしゃいな」
「嫌です」
 えらいところに気に入られてしまった。これは最早、女難の方がマシかもしれないと密かに思った。
「よろしくね、新入りちゃん。アタシ、この店のマスターのロゼよ」
 全く人の話を聞きやないな。いや、これは意図的に聞かなかったことにしている? (たち)の悪いオネエさん方だ。
「さあ、新入り。いい加減名乗りなさい」
 さっきから気になる。このジェームズは一体何様なのだろうか。
「神城、エディです……」
 ロゼもジェームズも恐らく源氏名だろう。それなのに、僕が本名を明かすというのは不公平感極まりない。