しかし、今回の凛花は少し違っていた。
「はい、エプロン」
「うん」
着替えて戻って来た凛花は、明らかに不機嫌な様子で平良から真っ赤なエプロンを受け取る。目つきが怖い。
「じゃ、じゃあ、僕は・・・」
鉄板の内側から、そそくさと自分の席に戻ろうとする平良の腕を、凛花の右手がガッシリと掴む。慄いて振り返る平良は、そこに第六天魔王の姿を幻視した。
「そこに座りなさい」
「・・・はい」
有無を言わせない迫力で、いつも凛花が座っている丸いパイプ椅子に平良を座らせる。
「で、臼田さんとは、一体どういう関係なの?」
「そ、それは・・・」
口ごもる平良に、凛花の怒りポイントが怒涛の勢いでチャージされていく。「良太郎君」とか、名前で呼んでいたシーンを思い出すと、それだけでイライラして平良を殴り飛ばしたくなる。
「それって、凛花に何か関係あるの?」
2人のやり取りに口を挟んだのは中薗だった。そちらに視線を移すと、何やら島田と一緒になってニヤニヤしている。
そんな2人と目が合った瞬間、凛花が燃やしていた煉獄の炎が鎮火していった。冷静になった凛花は自身の矛盾に気付いた。確かに、平良が紗希とどんな関係であろうが、凛花には関係のないことだ。それに対して怒るというのは、明らかに筋が通らない。
「だ、だよねえ・・・
ほら、平良、シッシッ!!」
強引に座らせた平良を今度は追い払うように立たせ、凛花がその丸椅子に腰を下ろす。それでも、正面に座った平良を見ると、再び凛花の胸がザワザワした。
凛花は自分の反応が理解できず、何度も繰り返し首を傾げた。
翌日、紗希との約束に向かった平良は、「遅れる」とだけ凛花に告げていた。平良にもたまには用事があるのだろう―――そう思っていた凛花に、思わぬ所から爆弾が投下される。
「ああ、そう。平良君、昨日来た女の子と約束していたものね。中央駅に5時だとか。ああ、それで今日は遅いのね」
ウンウンとひとりで納得する店主。その横で生地を作っていた凛花の手が、ピタリと止まる。
「ふうん、あっそう。デートってこと?」
「違うと思うけ・・・」
何気なく振り返った店主は、この場面では母親と言うべきだろうか、そこに魔王を見た。メラメラと燃え盛る炎をバックに、ゴゴゴゴという効果音が聞こえてきそうな雰囲気だった。
「い、いや、だ、だから、違うのよ。デートではなくて、相談に、そう、占いの依頼をされたんだけど断って。それで、平良君が・・・」
怒りの業火に包まれる凛花に、しどろもどろになりななら店主が疑惑を否定する。その時、奇跡的に昨日ここで中薗が使用した魔法の言葉を思い出す。店主が慌てて、その封魔の呪文を口にした。
「そ、そもそも、平良君がどこで何をしていようと、凛花には関係ないでしょ?」
「た、確かに・・・」
プシュウーという効果音付きで鎮火する炎。
それを見た店主が、我が娘の鈍感さに「やれやれ」と首を左右に振った。
その頃、平良は中央駅の改札口で紗希と会っていた。相手が紗希ということもあり、珍しく時間通りに待ち合わせ場所に登場した平良。紗希はキッチリと、待ち合わせ時間の5分前には改札口に到着していた。
「すいません、待ちましたか?」
「ううん、今来たところだから」
ドラマのワンシーンのような会話を交わし、平良は内心照れ臭くて苦笑する。そんな純真な心を完全スルーした紗希は平良の腕を掴むと、話しをする場所へと移動を始めた。
「はい、エプロン」
「うん」
着替えて戻って来た凛花は、明らかに不機嫌な様子で平良から真っ赤なエプロンを受け取る。目つきが怖い。
「じゃ、じゃあ、僕は・・・」
鉄板の内側から、そそくさと自分の席に戻ろうとする平良の腕を、凛花の右手がガッシリと掴む。慄いて振り返る平良は、そこに第六天魔王の姿を幻視した。
「そこに座りなさい」
「・・・はい」
有無を言わせない迫力で、いつも凛花が座っている丸いパイプ椅子に平良を座らせる。
「で、臼田さんとは、一体どういう関係なの?」
「そ、それは・・・」
口ごもる平良に、凛花の怒りポイントが怒涛の勢いでチャージされていく。「良太郎君」とか、名前で呼んでいたシーンを思い出すと、それだけでイライラして平良を殴り飛ばしたくなる。
「それって、凛花に何か関係あるの?」
2人のやり取りに口を挟んだのは中薗だった。そちらに視線を移すと、何やら島田と一緒になってニヤニヤしている。
そんな2人と目が合った瞬間、凛花が燃やしていた煉獄の炎が鎮火していった。冷静になった凛花は自身の矛盾に気付いた。確かに、平良が紗希とどんな関係であろうが、凛花には関係のないことだ。それに対して怒るというのは、明らかに筋が通らない。
「だ、だよねえ・・・
ほら、平良、シッシッ!!」
強引に座らせた平良を今度は追い払うように立たせ、凛花がその丸椅子に腰を下ろす。それでも、正面に座った平良を見ると、再び凛花の胸がザワザワした。
凛花は自分の反応が理解できず、何度も繰り返し首を傾げた。
翌日、紗希との約束に向かった平良は、「遅れる」とだけ凛花に告げていた。平良にもたまには用事があるのだろう―――そう思っていた凛花に、思わぬ所から爆弾が投下される。
「ああ、そう。平良君、昨日来た女の子と約束していたものね。中央駅に5時だとか。ああ、それで今日は遅いのね」
ウンウンとひとりで納得する店主。その横で生地を作っていた凛花の手が、ピタリと止まる。
「ふうん、あっそう。デートってこと?」
「違うと思うけ・・・」
何気なく振り返った店主は、この場面では母親と言うべきだろうか、そこに魔王を見た。メラメラと燃え盛る炎をバックに、ゴゴゴゴという効果音が聞こえてきそうな雰囲気だった。
「い、いや、だ、だから、違うのよ。デートではなくて、相談に、そう、占いの依頼をされたんだけど断って。それで、平良君が・・・」
怒りの業火に包まれる凛花に、しどろもどろになりななら店主が疑惑を否定する。その時、奇跡的に昨日ここで中薗が使用した魔法の言葉を思い出す。店主が慌てて、その封魔の呪文を口にした。
「そ、そもそも、平良君がどこで何をしていようと、凛花には関係ないでしょ?」
「た、確かに・・・」
プシュウーという効果音付きで鎮火する炎。
それを見た店主が、我が娘の鈍感さに「やれやれ」と首を左右に振った。
その頃、平良は中央駅の改札口で紗希と会っていた。相手が紗希ということもあり、珍しく時間通りに待ち合わせ場所に登場した平良。紗希はキッチリと、待ち合わせ時間の5分前には改札口に到着していた。
「すいません、待ちましたか?」
「ううん、今来たところだから」
ドラマのワンシーンのような会話を交わし、平良は内心照れ臭くて苦笑する。そんな純真な心を完全スルーした紗希は平良の腕を掴むと、話しをする場所へと移動を始めた。