ㅤ ──カランカランッ

 ㅤ私が秀哉にここの噂を話していると、一人の若い女性が店に入ってきた。
 ㅤ艶やかで長いブルーブラックの髪にカジュアルな服装でまとめた彼女は店内の様子を窺っているようだった。


「いらっしゃいませ」


 ㅤ立ち止まっていた女性に声をかけると、彼女はおどおどしながら訊ねてきた。


「あの...ここで過去に手紙を送ることが出来ると聞いたのですが...」
「はい、過去へのご依頼ですね」


 ㅤ出来ますよ、とニッコリ微笑むと彼女は緊張が解けたようにほっとした。
 ㅤそして、彼女を机に案内して、秀哉を呼んでくる。


「彼は私の友人で高嶺秀哉(たかねしゅうや)といいます。彼も同席してもいいでしょうか。」


 ㅤはい、と優しく許可を頂いたので、私は秀哉にも話を聞いてもらうことにした。


「まず、貴女のお名前と送り先の西暦、月日、お相手のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」
「分かりました、私は音海 結衣(おとみ ゆい)と申します...」


 ㅤ音海さんの話を聞くと、二年前に音海さんの親友・七瀬 千佳(ななせ ちか)さんが不慮の事故で亡くなったそう。
 ㅤその日に二人は大喧嘩をしたようで、七瀬さんが亡くなる前に『結衣、ごめんね』という言葉を遺して逝去したのだという。
ㅤ結衣さんは謝る事さえ出来なくて、ずっと後悔していたそうだ。
 ㅤそして、偶然にも数年前に友人の親戚からここの噂について聞いたことを思い出し、自己満足で終わらせるつもりはないが、せめて過去の七瀬さんに謝れたらと考えたらしい。