ㅤ「まず、櫻井さんが転移を望まれる理由をお聞かせください。」


 音海さんの時と同じように秀哉を呼ぶと、ㅤㅤ私は櫻井さんの話を聞き始めた。

 まだ二十代半ばの彼はある重い病気を患い、余命宣告を受けていた。
そんな彼には学生の頃からずっと慕っている女性がいた。
 彼女の名は大原莉緒(おおはらりお)
大原さんの写真を見せてもらうと、ナチュラルなブラウンのボブに丸顔。
こちらに向けた、くしゃっとした笑顔が柔らかい雰囲気を醸し出していた。


「綺麗ですね。」


 私は思わずそう彼に伝えた。


「はい。ですが、彼女はあと一年で別の人と結婚してしまうんです...」


 彼はそう言い、物悲しげに微笑んだ。

 櫻井さんは病気を患っていることもあり、この恋を諦めているようだった。