ㅤお花見でお腹いっぱいになった後、近くのカフェで少しお茶をしてから望月手紙店に戻ってきた。
「楽しかったね」
「そうだな」
ㅤ誘ってくれてありがとう、と私は微笑むと秀哉も目を細めた。
ㅤ ──カランカランッ
「いらっしゃいま...」
ㅤ奥から顔を出すと、驚いたことにそこにいたのは先程ぶつかった若い男性だった。
ㅤゆったりとした脱ぎ着しやすそうなオーバーサイズシャツを着た彼は、何だか顔色が悪そうだった。
「あの、手紙を出せますか?」
「...承知しました、少しお待ち頂けますか」
ㅤ私は急いで先程拾ったハンカチを奥から持ってくる。
「先程はぶつかってしまい、すみません。これ貴方のですよね。」
「ありがとうございます。これ、大切な親友から貰った物で、見つかって良かったです。」
ㅤ彼の顔色が少し良くなった気がした。
「そういえば、手紙のご送付でこちらにいらしたんですよね。」
「はい、これを送ってもらえますか?」
「畏まりました。お預かりします。」
ㅤ男性の名前は櫻井侑。
どうやら受け取った手紙は彼のご両親宛てのようだ。
ㅤ手紙の手続きを済ませると、櫻井さんは窺うように私を見て言った。
「ちなみにですが...ここは未来に手紙を送ることが出来ますか...あ、すみません変なことを聞いて...」
「いえ、出来ますよ。」
私はオドオドしている彼を落ち着かせるように早く言葉を返した。
そして、少し話が長くなってしまうので、と席に案内する。
「申し訳ありませんが、なるべく早めにお願い出来ますか。」
「分かりました。ではこれから十分くらいお時間を頂きますね。」
ㅤそう言い、私は説明をし始めたのだった。