確かに食券の券売機はいつも並んでいる。そこに人を伴ってしまったら邪魔になってしまう。だからパンをあんなに不味そうに食べてたのかと納得した。きっと日野くんは飽きてしまったのだろう。

「仕事上仕方ない、ってのはあるんだけど。……食事が苦痛になって来ててさ。そんな生活してる中で、五十嵐さんのマフィンを食べた時だけはただ美味しいって、幸せだって思えたんだ。だから五十嵐さんの時間を俺に買わせて欲しいんだ」

 彼は、じっと強い目で私を見る。
 食事は楽しいもののはずなのに。それに毎日三食だ。日に必ず苦しい想いをしなきゃいけないなんて辛すぎる。突拍子もない話だけれど彼のあまりの状況に私の心は決まった。