いじらしく、日野くんにマフィンを差し出す佐々木さん。その行動に私は頭が真っ白になった。彼女が差し出したマフィンは間違いなく私が焼いたものだ。あの焼き加減、色、膨らんだ感じからして絶対に私のマフィンだ。

 佐々木さんはあのマフィンを、自分で、自分で食べるんじゃなかったの……? 焦がしたのを渡したくなくて私のマフィンを……?

 次々浮かぶ彼女への不信感に悶々としていると、日野くんはマフィンを受け取った。事務所で手作りを貰うことを反対されているはずなのに。

「へぇ、すごい上手に出来てるね」