この階段は教室から遠いことで人気が無く、駆け下りやすいから絶対に速く帰れるルートだと思っていたのに。これじゃあ普通にタイムロスだ。スーパーのタイムセールが終わってしまう前に、早く材料買いに行きたいのに……。どうしよう、今から戻った方が早い? でも話がすぐ終わるなら、ここでちょっと待ってるほうが絶対に早いはず……。

 じっと気配を殺して待っていると、佐々木さんは鞄からマフィンを取り出した。

「このマフィン、日野くんの為に一生懸命焼いたの。事務所のこととか、あるかもしれないけど、良ければ食べてくれないかな……?」