どうしよう。あいつめっちゃ見てくるとか思われたら……でもそんなの慣れっこか。女子の皆……芽依菜ちゃん以外の皆は、ほぼ日野くんを見ているわけだし。

 感じの悪い印象は与えないよう注意をしつつ、彼の方向から周りへ自然と視線を移していく。そして少しずつ他の班を見ていって、あたかもクラス全員を見ている雰囲気を出しながら、最後にオーブンに顔を向けた。

 マフィンはむくむくと膨らみ、甘いチョコレートと香ばしいバターの香りが漂ってくる。

 幸い焦げたり縮んでいる様子もない。私は安心しながら傍の椅子に座った。