「あの天高《あまこう》に入学したんだって! すごいねえ!」
「へへ、ありがとうございます! やっと受験終わってせいせいですよー!」
天高とは、県立天津ヶ丘高校。この春私が入学した高校のことだ。
自由な校風と新しく改築された新校舎を大々的に謳う有名な学校で、図書館は国立のものと匹敵するらしい。それに普通の学校にある施設だけじゃなく、様々な設備が備わっている。天体観測ができる部屋や、大きなシアタールーム。屋内陸上競技場なんかもある。
けれど、私はちっとも興味が無い。
私が天高を受験したのは親や先生の勧めによるものだ。私は美味しいものを作って食べることが出来ればいい。だから高校受験をするにあたり、志望校がなくて、調理系のところがあるなら行きたかったけれど通学に何時間もかかるような……つまり県外だった。
私は美味しいものを作って食べたいだけだから、調理師になりたいわけでもなくて、担任の先生に勧められるがまま、流されるまま、天高を受験することになった。いわば流された結果だ。
でもこの高校に受かってよかったと私は心の底から思っている。何故なら受験が終わってくれたからだ。本当にどこでもよかったけど、受かってよかった。そう思うほど、本当に、心の底から、私は受験がきつかった。



