「五十嵐さんと会えてよかった。きっと五十嵐さんがいなかったら運びきれてなかったよ。ありがとう」
「えっ……あ、あー、気にしないで」
いつの間にか職員室に辿り着いていたらしい。私の持っていたプリントたちは日野くんが抱えていて、彼は「ここでいいよ」と笑う。
「五十嵐さん。今日はありがとう」
「どういたしまして。えっと……じゃあね、日野くん」
「うん。またね」
日野くんの声色にひやりとしたものを感じて、顔を上げる。でも彼は先ほどと同じく穏やかに微笑んでいる。全く憂いや暗さは感じられない。
私はどことなく違和感を抱えたまま、日野くんの元を後にしたのだった。