「あげてたもんね」

 ぼそりと彼が呟いた言葉に足が止まった。彼は私の先を二歩ほど進むと、「どうしたの?」と心配そうに振り返る。私は慌てて「何でもない」と歩みを再開した。

 さっきの日野くんの声、機械みたいに抑揚がなくて、感情が削ぎ落とされたみたいだった。

 というか、あげてたもんねって、どういう意味だろう。思い当たることが全然ない。