「何だろあの人だかり、また日野くんかな」 彼女は近くの人の山を見て首を傾げる。視線を向けると、人の山はほぼ全員が女子生徒だった。誰かの周りをバリケードみたいに囲むようにして集まっている。その中央には日野くんが座っていた。 「珱介くんさぁ、今日調理実習で作ったマフィン受け取ってくれる?」 「えっずるい! 私もあげる! いーい?」 「駄目だよ。事務所で手作りとか、そもそも学校で貰い物はするなって言われてるから、ごめんね」