街灯やオフィスビルの並ぶ通りを日野くんと歩いていく。

 周りはこれから家に帰る会社員の人たちでぽつぽつ人通りがあるけれど、それなりに薄暗い為か彼を気にすることもなければ、ましてや私を認識するなんてこともない。

 あれから昼食を食べ終える頃には夕方で、日野くんは夜からお仕事があり、仕事へ持っていくおにぎりを作って解散になった。

 初めは彼の分だけ握ったけれど、彼は「五十嵐さんの夕食の分は?」と譲らなかった為、私の分も握らせてもらった。

 そして今私はおにぎりを鞄に入れて、日野くんの背中を追っていた。のんびりと歩く彼は私を送ることを当然のように申し出てくれたけど、そろそろお別れをした方がいい気がする。もうすぐ駅に着くし人通りだって増えてくる。

「ねえ、日野く――」

「月が綺麗だねえ、五十嵐さん」

 こちらを振り返りながら空を見上げる日野くん。空を見上げると、卵の黄身のような色をした月が浮かんでいた。

「そうだね」