突然放たれた言葉に目が点になる。しかしそんな物騒な言葉を使った目の前の日野くんは、子供が玩具を買って貰った時みたいに酷く無邪気に笑っていた。

「……こ、殺せるって。そんなこと出来ないし……っていうかしないよ!」

「出来るよ。俺このままだと五十嵐さんの作ったものしか食べられない。だから、五十嵐さんが俺のご飯作らなくなったら、俺は間違いなく餓死するよ」

「が、餓死って……」

「五十嵐さんが半年くらい俺のこと放っておいたら、そこら辺で骨とかになってるんじゃない? そのうちニュースでやると思うよ。この部屋も事故物件になるから、相当安く買えるだろうね」

 日野くんの目は本気だ。彼が指さす方向にはカーペットが敷かれていて、力なく横たわり瞳を閉じる彼の姿を想像して怖くなった。しかし彼はどこか興奮した様子で「俺のこと殺したくなったら、いつでも殺していいよ」と恐ろしいことを話す。

「し、しない! そんな恩を仇で売るようなこと絶対しないよ」

「仇にならないよ。これだけ五十嵐さんの時間沢山貰っちゃってるからね。俺だって相応の対価を払わないといけない。嫌いになったら殺す権利が五十嵐さんにはあるんだよ」

「ひ、日野くん……!」

「はは、五十嵐さん。そんな困った顔しないで」