「笑わないでよ、俺本気だよ? 蹴ってもいいし、針で刺してもいいしね。ベランダから放り投げてもいいよ。ぽーんって」

 彼はおどけながら笑っている。さっきの彼はちょっと怖かったけれど、嫌われてないとか、近づいても大丈夫って言われて安心した。でもベランダから放り投げるとか、相変わらず彼の発想は突飛だ。

 そろそろ鱈もご飯も出来た頃じゃないかとオーブンや炊飯器に目を向けると、丁度完成を知らせる音が鳴り響いたのだった。




 食卓に出来た料理を置いて日野くんと向かい合わせに座る。テーブルにはお店で彼が買っていた水色とオレンジのランチョンマットが並べられていて、私は水色、日野くんはオレンジだった。

 真ん中にはブーケを飾る花瓶が飾られている。あまり生活感のないおしゃれな内装の雰囲気もあってか、並べているのは私の作った料理のはずなのにお店で食べるみたいだ。

「いただきます」

 どちらからともなく声を合せて手を合わせると、日野くんはうっとりした顔で食卓に並んだ今日の夕食を見渡す。

「すごい美味しそう。いい匂いだね」

「い、一応カロリーとかも考えて、ピラフは半分カリフラワーで出来てて、鱈フライは揚げてないから、えっと、色々大丈夫なはずだよ……!」