「うーん、何だろ。五十嵐さんの作ったものなら何でもいい……っていうと、多分困らせちゃうんだよね」
「で、できればリクエストほしいなって。日野くんの食べたいもの、作りたいな」
「じゃあ……鱈。前に話してた鱈の揚げ物が食べたい」
鱈フライか。丁度鱈もある。鱈フライにして、ポテトはじゃが芋を里芋に代えて……。カリフラワーを半分足して、海老ピラフ……。となると酸味欲しいからスープはミネストローネ、タルタルソースはカロリーが出ちゃうから、マヨネーズをヨーグルトに変えて……。
一つ一つ取捨選択をして献立を組んでいく。
鱈フライはそれ自体作っていなかったし、今日は揚げないで作っていこう。そう考えて、ふと頭の中に疑問が浮かんだ。
日野くんに、鱈のフライの話なんてしたこと、あったっけ……?
私は彼に、揚げ物を作ることを避けていた。なんとなくモデルである職業についている人だし、避けたほうがいいかなと思っていたからだ。揚げない調理法を覚えたのは昨日だから、それまでは絶対的にその話はしていないはず……。
「五十嵐さん?」
思い返していると、日野くんが不思議そうにこちらを見ていた。私が忘れているだけで、魚の話とかをした延長で言ったことがあるのかもしれない……。