昂る気持ちのままに日野くんに伝えると、彼は押し黙るようにして私を見ていた。その目は引いているというよりも、何かを注意深く覚えようとしているような瞳で私は首を傾げた。
「どうしたの?」
「ああ、ごめん。そうやって、五十嵐さんが熱心に何かしてるの好きだなと思ってさ」
「え」
日野くんの言葉に固まった私を見て、彼は「駄目だった?」と問いかけてきた。
駄目ではないけれど今のは心臓に悪かった。慌てて首を横に振ると、彼は冷蔵庫へと近づいて行く。
「ね、五十嵐さん何飲みたい? 紅茶もコーヒーもジュースも、色々揃えてみたんだけど……。あ、冷蔵庫の中見る? こっち来て」
いわれた通り日野くんに近づいていくと、両開きに開かれた扉から溢れんばかりの食材が顔を出した。調味料も野菜も果物も魚も肉類もすべて揃っている。
彼が好きな煮物は勿論のこと、和食御膳みたいなのも作れそうだし、パエリアも、ブイヤベースも出来るし、八宝菜、酢豚……、材料が多くて迷ってしまう。
というかこんなに食材があって、腐らせてしまわないのだろうか……?
「日野くんは何食べたい?」