あれから少し歩いて更に人気のない道からタクシーに乗って四十分。辿り着いたのはそれはそれは立派なタワーマンションだ。
タクシーの外の景色がどんどん都会的に栄えていき始めたあたりから、もしや日野くんの家はとんでもない家なのではと予感はあった。
でもこんな、観光のポスターに映り込んだりするようなマンションにご在宅だとは思わなかった。
そして更に驚いたのは、日野くんの家の中だった。広いというのも勿論あるけれど、私が特に驚いたのは――、
「最新型の……システムキッチン……」
「へー。これそうなんだね」
日野くんの家の最新型のシステムキッチンを眺める私をよそに、彼は平然としている。でも私は全然落ち着けない。
グリルも焼く煮る蒸すと様々な調理法が選べて、吐水口の引き出しも可能。シャワーも調節出来るから、野菜を洗うの……特に泥汚れを落としたりするのに、めちゃくちゃ便利な機能を持ったキッチンが、今、私の目の前にある。
私の家にあるものは、普通の三口コンロに魚焼きグリルがついている一般的なものだから、本当にこういう、多機能です! というキッチンは憧れるし、わくわくしてしまう。
「すごい……すごいよ! 野菜、綺麗に、それに早く洗えるよ!」