「真木くん、怪我しないかな……」
芽依菜ちゃんは真木くんを心配しているらしい。
彼は気怠そうにしながらコートの端で体育座りをしていた。試合に参加する意欲は皆無そうだし、怪我することはなさそうだけど相手は真木くんだ。
何も無いところで転び、この間は三輪車に轢かれかけて坂から転がり落ちたらしく包帯を腕に巻いていた。芽依菜ちゃんの心配も一概に過保護とはいいきれない。
「日野くん、これ! ビブスどうぞ!」
遠くから発された声なのに私は反射的に視線を向けてしまう。視界に入ったのは、女の子たちが日野くんにビブスやタオルを渡す光景だった。
日野くんすごい人気だ。でも、いくつものビブスやタオルを差し出される彼はどこか浮かない顔をしている。
「日野、相変わらず女子に囲まれてんじゃん。羨ましいなぁくそがよお!」
声の主は私たちの後ろにいた隣のクラスの男子だった。
体育は二クラス合同で行われているけど、やっぱり他のクラスの男子が近くにいるのは落ち着かない。彼らは試合を終えたらしくタオルで顔をゴシゴシ拭きながら呼吸を整えていた。
「俺本当あいつ嫌いだわ。誰にでもいい顔して」