――うん。五十嵐さんの料理だったらな……って。五十嵐さんの料理、好きなんだよね。なんか力が抜けるって言うか、落ち着く

 ふと日野くんの声を思い出して、顔に熱が集まっていく。私は顔を横に振って熱を逃がすようにしてからまた料理雑誌を読み込んでいった。







 終業式当日。私は体育館に響き渡るホイッスルの音を聞きながら、コートの端に寄ってバスケの試合の様子を眺めていた。

 というのも、新設校で一応は進学校でもあるこの高校では、座学が重視され体育や美術などの教科は比較的後回しな組まれ方をする。今日は終業式だけど、雨などで延期になり授業日数が少なくなった体育が一時間目から二時間分行われていた。

 皆はリレーや持久走などきついものじゃない分楽しそうに授業を受けている。

 コートの中では白熱した試合が繰り広げられているけれど、私は今日の放課後日野くんの家にいくことが頭から離れずそれどころじゃない。

 一方の隣にいる芽依菜ちゃんも顔色を悪くしながらちらちらと後ろを気にしていた。視線を追うと、丁度男子たちも隣のコートでバスケを行っている。