「日野くんが、よければ、お言葉に甘えた、い、で、す」

 文字を打って、送る。

 すぐに既読がついた。ペンギンが喜ぶスタンプとお礼の言葉。私も同じように動物のスタンプを送り、「明日よろしくお願いします」と打って送信しスマホを閉じる。

 ……明日、日野くんの家に、行く。

 なんだか現実味が湧かない。なのに心臓はばくばくしてきて締め付けられる気がしてくる。

 どうしよう……いやどうもしないか。いつも通り、いつも通りがちょっと変わっただけだ。何作ろう。日野くんの家で作るから前日から下準備……とかは出来ない。夏だし、加熱済みならまだしも傷んでしまう。

 ……でも、これは日野くんに出来立ての料理を食べてもらうチャンスではないだろうか。

 冷めても美味しく出来るように作ってはいるけど、出来立てはやっぱり美味しいし……。煮物は出来立てより冷えた方が好きとか、派閥は色々あるけど、焼き魚とかソテー類は熱い方が美味しい。

 じゃあ、明日作るのは出来立てが美味しい料理……。あとは、弁当じゃないから生ものも使えるようになって色々制限が無い……。

 そう考えて自分の心が浮き立っていることに気付いた。慌てて頬を叩いてしっかり気を引き締める。

 駄目だ。落ち着こう少し。食べ物のことを考えよう。レシピを読んで明日の事を考えなきゃ。雑誌を手に取りぺらぺらめくると筑前煮のレシピが出てきた。