彼女がいるのに、私なんか……と言っても一応女子な訳で。二人きりでお昼を食べていい訳ない……はず。
だからやはり彼女はいないかもしれない。彼は光熱費を払おうとした時自分のことを「泥棒」なんて言っていたくらいだし、きっちりした人のはずだ。
「よし」
夕食作りに取り掛かるべくエプロンに着替えるとスマホが震えた。画面を確認すると送り主は日野くんだった。
『明日って暇?』
『俺の家に、夕食を作りに来てくれないかな?』
連なるように並ぶ二つのメッセージに目が釘付けになっていると、またぽんと浮かび上がるように新しいメッセージが表示された。
『夏休み、暑くなるし、そろそろ家で夕食作って欲しくて』
『だめかな?』
それらを目で追って、呆然とする。
日野くんの家で、私が作る――? 届けるじゃなくて?
確かに、夏だし食材の痛みも早い。でも、どうやって返信しよう。なんて返そう。後で返そうにも今まさに見てしまっているせいで、日野くんのメッセージの隣には既読がついてしまっている。